〈歌舞音曲〉→〈曲〉芸・その1
これまで邸居=自邸の庭が歌舞音曲を楽しむ場であり、肉体と精神の浄化が、その本分であることを〈歌〉〈舞〉〈音〉
をめぐり順次語ってきました。
そして4つ目の〈曲〉芸も、もちろんストレス解消の役割をもった娯楽のシーンであり、曲芸は大衆娯楽のパラダイスで、ありとあらゆるバラエティ豊かなパフォーマンスに満ちた芸能の世界です。
一方で、芸には芸能の他にも芸術(アート)という分野があり、人類の誕生以来、連綿として存在しています。
アーティストは人知を超えた領域の不可知の何らかのインスピレーション(啓示・直覚)をイメージ化し、言葉や絵画、音楽や映像などの手段で自己表現をします。
そして、そこに内在する哲理や意味・象徴を判読できる者の手によって、イメージのエッセンスが取り出され、現実生活の場に持ち込まれる時、イメージを編集して考える人(デザイナー)と、ものをつくる人(職人・クラフトマン)との分離が発生し、経済や技術といった効率至上原理の洗礼をうけて、最終的に生活の道具に変容し、私たちの手に届き、生活を豊かなものにしてくれます。
こうしてみるとアートには、もともと自己実現(満足)という宿命があり、社会生活に帰属する指向性がひそんでいるのかもしれません。
いいかえるとイメージを媒体として、生業(なりわい)の連鎖の頂点にアートがあるともいえるのですが、このヒエラルキーの最上部にいる当のアーティスト自身のその振舞いは〈遊び〉以外の何者でもないのです。