第宅・園林(邸居)
〈自邸の庭であり、歌舞音曲を楽しむ場=家庭〉
邸居すなわち最も身近な自邸の庭が歌舞音曲を楽しむ場ですと言われても、ピンとこないかもしれません。
園林が中国語で庭のことであると言われれば、園芸・ガーデニングとしての庭の情景がまず思い浮かぶのが正直なところでしょう。
勿論、植物を育て慈しみ、花を愛でる庭は大切なのですが、家庭生活の根幹は〈メシの食い扶持を得て、寝るところを確保する〉ことにあると思います。
草花はなくても生きていけますが、人は食べなければ、そして睡眠をとらなければ死に至るのです。かくして一家の主とその家族は、メシの食い扶持を得る為に働くのです。
現代日本では職住分離が進んでいますが、少し前の時代まで、我が家は労働の場でした。
お百姓さんは田んぼの中に住んでいたし、商人はお店(たな)の裏で生活し、鍛冶屋さんも仕事場の隅で暮らしていたのです。
そして労働=仕事は社会的行為ですので、様々な制約が伴いストレスが溜まります。
このストレスの解消の為に、人々は古来〈歌い〉〈踊り〉〈音楽〉をし〈曲芸〉を楽しんだのです。
この肉体と精神の浄化(カタルシス)、すなわち歌舞音曲を楽しむ場が、実に自邸の庭空間(邸居)の本質なのです。